バトル・シティ編のラスボスであるマリクは、表人格と裏人格がありました。
遊戯や獏良のような千年アイテムによる人格ではなく、トラウマによって人格が分離したという、純粋な二重人格です。
物語当初は表マリクが暗躍し、マリクによって洗脳された人間を通して、オシリスの天空竜を主軸としたデッキで遊戯とデュエルしました。
その後、バトル・シティ決勝トーナメントで裏人格が目覚め、ラーの翼神竜デッキは裏人格のマリクが大幅に改良した上で戦っていたため、表人格が使う予定だったデッキは明かされていません。
表マリクにとってもラーの翼神竜デッキは、オシリスデッキより強いと思っていたようですし、遊戯や海馬にも絶対に勝てる自信があるようでした。
裏人格のマリクには「ヌルいデッキ」と称されていましたが、果たして本当にラーを用いた彼のデッキは強かったのでしょうか?
表マリクのデュエルの腕前は?

《出典:遊☆戯☆王》
表マリクのデュエルが描かれたのは、バトル・シティでの遊戯との対戦一度のみ。
そのデッキはオシリスの天空竜デッキだったため、マリクにとっては2番手のデッキだったと思われますが、マリクの腕前を図る指標にはなります。
神のカードであるオシリスの天空竜は、召喚さえできれば極めて強力な能力・耐性を持っているため、カード単体の強さだけでも遊戯を圧倒できるほどのものでした。
それに加えて、無限に再生できるリバイバルスライム、モンスターが蘇生されると3枚ドローできる生還の宝札など、使用するカードはどれも強力なものだったと思います。
ただ戦術はどうかというと、《無限の手札》を使って手札制限をなくしオシリスの天空竜の攻撃力を7000ポイント以上維持できるようにしていましたが、正直そんなことしなくても十分強いので、必要だったのだろうか……。
もちろん手札を捨てずに取っておけること自体強いのですが、ただでさえ生贄を3体も必要とする神のカードは重い上、無限の手札を活用するなら生還の宝札、リバイバルスライムとのコンボが前提となるでしょう。
コンボカードは決まれば強いのですが、必要なカードを揃えるのが大変で、手札事故を起こす危険が高くなります。うまく回ったから良いものの、勝率を上げるなら採用しなくても良かったのではないでしょうか。
実際のところ、オシリスの攻撃力を無限に上げていくロマンのための戦術だったようにも見え、やや無駄の多いデッキだったと考えられます。
イシズより弱い

《出典:遊☆戯☆王》
表マリクは姉のイシズに勝ったことがありません。
イシズはバトル・シティ編でも海馬をギリギリの所まで追い詰めたほど強かったですが、あれは千年タウクによる未来予知のお陰でもあります。
マリクとの戦いでイシズが千年タウクを使ったかどうかは言及がありません。ですが海馬戦で千年タウクを使っていたのは、何としても裏マリクと戦うためであり、本来は使ってはならないと言って胸中で謝罪しています。(ペガサスとは大違いですね)
イシズの性格・信念を考えると、表マリクとのデュエルで千年タウクを使っていたとは思えませんので、おそらく素の実力で表マリクを上回っているのだと思います。
裏マリクは「あの戦術を破れるのは俺しかいない」とイシズを高く評価していたので、やはり実力も十分高いのでしょうが、それにしても神のカードを用いても表マリクが勝てないというのは……うーんどうなんだろう。
ラーの翼神竜の肝心な効果を知らない

《出典:遊☆戯☆王》
一番の疑問点はここ。
ラーの翼神竜はいくつか特殊能力を秘めているのですが、肝心なところを表マリクは知らないんですよね。
表マリクが知っている、ラーの翼神竜の特徴を簡単にまとめると、
- 召喚には3体の生贄が必要
- 攻撃力守備力は、生贄にしたモンスターの攻撃力守備力の合計値となる
- 召喚されたラーは、テキストを読み上げたプレイヤーのしもべとなる
- 相手の全モンスターに一度に攻撃できる
- 魔法カードの効果を1ターンのみしか受け付けない
- トラップカードの効果を受け付けない
- モンスター効果は大体受け付けない(低級モンスターだからという理屈)
- 破壊系、洗脳系の効果は大体受け付けない
- 本来特殊召喚されたモンスターはそのターン攻撃できないが、ラーは速攻能力があるため攻撃できる
こんなところ。9番は知らなかったかもしれませんが。
死者蘇生で特殊召喚しても、そのターンのエンドフェイズに墓地に送られてしまう上、生贄召喚でなければステータスが0なので、表マリクはラーの封じ手は、墓地に捨てさせることと言っていました。
これだけ見ると耐性は素晴らしいですが、生贄にしたモンスターのステータスが高くないとあまり強くならないんですよね。
生贄召喚のためには、低ステータスのモンスターの方が場に揃えやすいので、高ステータスのモンスターを揃えざるを得ないラーの翼神竜は、他の神のカードよりも重いと言えるでしょう。
その割にはオシリスの召雷弾のような強力な効果を持つわけでもないので、これを主軸としていた表マリクのデッキは本当に強かったのか? と疑問を持ってしまいますね。
ちなみに裏マリクだけは知っている、更なるラーの秘めたる効果は以下の通り。
- 自らのライフポイントを1だけ残し、残る全てをラーの攻撃力守備力に上乗せできる。
- 自分のモンスターを生贄にして、その攻撃力守備力をラーに上乗せできる。
- 墓地から特殊召喚したときにライフを1000ポイント支払うことで不死鳥となり、対象モンスター1体を破壊耐性を無視して確実に破壊する。またこのモードのときは自分は絶対に破壊されない。
これらは表マリクは知らず、裏マリクだけが知っていました。
この3つの能力があるため、生贄召喚よりも墓地から蘇生させ、攻撃力を一気に底上げさせて相手を倒すという1ターンキル戦法を裏マリクは好んでいました。
たしかにこれらの能力があると状況に合わせて戦えるので強いです。他の神のカードよりも遙かに場に出しやすくなりますからね。
表マリクはこれらを知らずに、ラーの翼神竜が最強のカードだと思っていましたが、果たして本当に強かったんですかねぇ。どのような戦術で戦う予定だったのか気になります。
結論
オシリスデッキを用いた遊戯とのデュエルにおけるプレイング、イシズに勝てないこと、ラーの肝心な効果を知らないことを考えると、表マリクはそんなに強くはなさそうだと判断できます。
オシリスデッキの方が強いのでは? とまで思ってしまいますね。でもあれもうまく回ったから強かっただけで、事故率の高さはかなりのものだったんじゃないかな。
ただ事故率の高さで言えば闇遊戯も相当なものなので、原作の世界では欲しいカードをドローできる力があるか、というのがデュエリストとして一番重要なことなんでしょうね。